50年以上の歴史がある養鶏場
全国的にはあまり知られていないが、東京には全国・世界に誇るブランド肉がある。ここ、伊藤養鶏場の「東京うこっけい」もそのひとつ。戦後の物資不足の時代に「鶏を飼って卵を売れば儲かる」と親戚に言われた先々代が卵を売るために始めた養鶏場で、最盛期には1万羽を飼育していた。
今の飼育数は5,000羽ほどだが、3代目社長の伊藤彰さんは大量生産ではなく、アニマルウェルフェア(家畜福祉)を意識して鶏を育て、さらに先代の時から扱ってはいたが儲からないと半ば諦めていた「東京うこっけい」のブランディングに取り組んだ。
伊藤さんは、養鶏場を受け継いだ際に経営面や販売戦略を立て直し、事業継続するために東京うこっけいの飼育と販売に力を注いできた。最初は地元の若手農家6人と共に自らが看板となる「立川マルシェ」を立ち上げ、東京うこっけいの卵を販売した。農家が消費者と接して、こだわりや良さを直接伝えることで、農産物の価値向上を図ったのだ。
次に取り組んだのが東京うこっけいの肉だった。一般的な大規模養鶏場では100日前後まで育った雌鶏を仕入れて卵を産ませ、1~2年ほどで廃鶏する(採卵期間を終えて鶏舎から出す)ことが多い。しかし、伊藤養鶏場では質の良い鶏にするため、生後1~2週間の雛を仕入れて日齢ごとに適した配合の餌を与え、さらに、雌には卵を美味しくするための餌、雄には肉を良くするための餌をそれぞれ与えている。
これまで他の養鶏場が東京うこっけいの肉を販売してこなかったのは、ハイコスト・ローリターンだから。一般的なブロイラー(食肉専用・大量飼育用の鶏)に比べて育てる手間も費用もかかるが肉は小さく硬く、さらに色が黒いことで多くのシェフからは「味は良いけれど見た目が…」と言われ、なかなか扱ってもらえなかった。
しかし、柔らかく食べやすく改良されたブロイラーではなく、鶏本来が持つ力強い味や濃い出汁が取れること、他にはない画期的な食材であったことが、親子丼発祥の店「玉ひで」や有名レストラン「ミクニ」のシェフなどから評価され、他からも問い合わせが入るようになった。多摩エリアでは、国立の「Casa di camino(カーサ ディ カミーノ)」で、卵を使ったカルボナーラや、東京うこっけい肉を使ったメインディッシュを食べることができる。
中国や韓国では、卵は薬や鎮静剤として、肉は不妊病薬や薬膳料理の素材として珍重されてきた烏骨鶏(東京うこっけいの元)。ミネラル、ビタミン、コラーゲン、たんぱく質が豊富で、最大の栄養素は青魚に含まれる不飽和脂肪酸のEPAやDHA。これは肉類では烏骨鶏にしか存在しない。食べて美味しく、身体にも良い東京うこっけいの卵と肉。養鶏場に併設した直売所では卵を買うことができ、今後はさまざまな加工品を展開していくそうなので、ぜひ一度味わってみてほしい。
店舗情報
営業時間 | 9:00~17:30 |
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定休日 | 不定休 |
住所 | 立川市西砂町1-67-7 |
電話番号 | 042-531-6587 |
主な取り扱い商品 | 東京うこっけい卵、加工品 |